アトランティスはどこにあったのかという話になると、
古代地中海文明を持つ島々が必ず名乗りをあげる。私は
エジプトからアイルランドまでを含めた地中海世界を、丸ごと
アトランティス文化圏だったと考えている。ただ氷河期
終わり頃の天変地異に加えて、イタリアに代表されるように
火山噴火、地震+大津波、異民族の侵入などでさまざまな町
や文明そのものが滅んでしまった土地柄なのである。
BC1628年頃、サントリーニ島の火山噴火は、溶岩流出で
地下に空洞が出来て地表が落下。直径10㎞、深さ500mの
窪みに海水が押し寄せ、数100mの大津波となって周辺の島々
まで巻き込み、文明そのものを壊滅させた。クレタ島のミノア
文明が衰退し、飢えたミケーネ人が攻め込んできたものと
思われる。旧約聖書出エジプト記に描かれた火のひらめき(噴火)
人の顔が見えなくなるほどの暗闇(火山灰)、カエル、イナゴ、
ブヨの移動、人や家畜の死など、エジプトの十災の記述とも一致
している。
マルタ島といえば、犬のマルチーズで有名だが、この島は昔、
アフリカ大陸と地続きだった。25万年前のカバや小型の象の
化石が堆積している。マルタ島は地中海文明の生きた博物館
と言われ、本来の住人はマルタ語を話すマルチーズ。マルタ語
はイエスも話していたアラム語にアラビア語とラテン諸語の
混成言語。マルチーズが渡来したのは、BC750~500年頃。
北アフリカ・フェニキアやカルタゴからシシリー島経由で上陸
したイスラエルの失われた10支族の後裔だろうと言われている。
マルタ島は女神信仰が盛んで、バレッタ南8kmのタルシン神殿
には、エジプトの根源神フート同様の、渦巻き文様のレリーフが
数多くみられる。アル・サフラーニの丘の3層構造の地下神殿の
「聖にして聖なる部屋」からは、豊穣の女神像が出土した。
この像は長野県茅野市出土の縄文のビーナス土偶と同様の渦巻き
文様(死と再生・輪廻転生のシンボル)のモティーフである。
渦巻き文様は古代ヨーロッパのケルト文化圏に数多く見られる。
ケルトと縄文の類似性を指摘したのは、画家の岡本太郎である。
この地下神殿最大の謎は、エジプトのピラミッド同様に、焼け焦げ
や煤といった松明使用の形跡がないことにある。
クレタ島のミノア文明は、古代エジプト第1王朝以前のBC6000年
頃までは遡れるという。BC6400年頃の新石器地層からは、小さな
女神像が出土している。クレタ島全域に人が住むのはBC4000年
頃。BC3000~1100年の青銅器時代が青銅器時代。BC1700
から1450年のクノッソス宮殿王朝の時代が全盛期となる。芸術
が盛んな平和な海上貿易国家として、エジプト、キプロス、シリア、
フェニキア、キクラデス諸島などと交易し繁栄していた。ミノア人
はギリシャ語でも印欧語でもない未解読の線文字Aを使用していた。
BC1380年頃、ギリシャ本土アルカディア地方方言の戦闘的民族・
ミケーネ人が侵入し、宮殿は破壊され、火災で炎上した。