キリスト教の創始者・パウロは、ローマ皇帝のティベリウス・
カリギュラ・ネロなどを例にして「神が善であればなにゆえ
神はかくも多くの災厄を人間にもたらすのか」と主張した。
まっ、確かに例に挙げられた3人それぞれ、かなり悲惨な
人物たちなので、パウロの気持ちも理解出来る。
ローマ初代皇帝は、養父ジュリアス・シーザーを暗殺した
アウグストゥス。2代皇帝がティベリウスだ。彼は知性豊かな
人格者だったものの、少年好きの快楽主義者という一面も
持っていた。カプリ島の別荘に若い男女を集め、淫蕩の限り
を尽くしていた。この噂が世間に広がり批難されると、孫の
カリギュラは「彼はローマ帝国の恥辱である」として、
手兵を別荘に差し向け、祖父を蒲団で蒸し焼きにしてしまった。
そして祖父殺しのカリギュラが3代皇帝の座に就く。歴史家
はカリギュラを「痴呆・露出狂・サディスト・馬鹿」と表現
する。ティベリウスが蓄財した1500億の金を5年間で
散財した途方もない浪費家でもあった。カリギュラは少年時代
に実の妹を陵辱し、妻のカエソーニアの全裸姿を近親の兵に
鑑賞させる一方、自らはローマ中の若い娘たちを陵辱して
回った。ちょっとでも気に入らない事があると、総督や護衛官
でも自殺を強要した。41年1月、彼とその一族は護衛官将兵
によって皆殺しとなり、血統が根絶された。
カリギュラの後継はクラウディス帝。妻は稀代の淫婦として
知られたメッサリーナ。後妻が5代皇帝ネロの母親ユーリア・
アグリッピーナである。彼女はネロを皇帝の座に就けるため
クラウディウスを毒殺し、批判勢力も片っ端から毒殺させた。
彼女はネロを溺愛し自らの体もネロに奉げるが、かえって
疎んじられ、ネロによって謀殺される。
キリスト教の迫害者として有名なネロは「あらゆる淫行で
身を汚し、背徳の限りを尽くした」と哲人セネカの年代記
に書かれている。元老院と軍隊は錯乱したネロに死罪を宣告。
ネロは墓穴の中で自ら喉に剣を突き立て、30年5ヶ月の
生涯を閉じた。