人間は原罪を背負っているので、イエスの死後はイエスの
代理人である教会を通してのみ救われると説き、カトリック
教会の権威を確立したのは、北アフリカ・アルジェリア
生まれのアウグスティヌス(354~430)である。
父はローマの官吏で異教徒。母が熱心なキリスト教徒だった。
本人はカルタゴで法律と弁論術を学び、マニ教に熱中し、
次いでギリシャ哲学を学ぶ。
キリスト教に回心するのは32歳の頃。この間、放蕩生活を
続け、愛人と子供を捨てた過去を持つ。その反省から、彼は
人間の性欲こそ生まれながらに備わった悪だと痛感する。
「わき起こる欲望を誰が抑えられるというのか。誰にも
出来ない。その欲望が起こったら最後、意志の決定に従う
術はない。何を願ってもうまくいかない。この悪魔のような
性器の興奮は、アダムの原罪の証しだ。それは母親の子宮
から受け継がれ、人類を罪で汚し、悪を制して善を選んだり
運命を切り開いたりするする力を人間から奪っているのだ」
そもそもはイエス=霊=善であり、ローマ+オリエント世界
の地母神=肉=悪という図式はパウロ神学によって確立して
いたのだが、アウグスティヌスによって性欲は全面禁止と
確定したわけだ。でも禁止すれば人間の諸問題が解決する
のか? って話なんだけどね。