○第6段階/神はまた言われた。「地は生き物の種類に
従って生み出せ。家畜と這うものと、地の獣とを種類に
従って生み出せ」そのようになった。神はまた言われた。
「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、
これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、
地のすべての這うものとを治めさせよう。」神は自分の
かたちに人を創造された。すなわち神のかたちに創造し、
男と女を創造された。
およそ700万年前に、類人猿からヒトが分離たのは、出土
する骨からまあ確かだろう。同じ頃、チンパンジーから
ゴリラが分枝したらしい。ゴリラ、チンパンジー、オランウー
タンの大型類人猿はオランウータン科、小型類人猿はテナガ
ザル科、ヒトはヒト科に分類され、3科はヒト上科に分類
されている。
人間の進化に関してはさまざまな謎がある。人間は700万年
の間に大突然変異を何度も繰り返したのに対して、従兄弟の
チンパンジーやゴリラはなぜ進化しないのか? 種が大突然
変異を起こすには何千万年~1億年程度かかるのに、人間
だけはアウストラルピテクス属(南方の猿の意味)からホモ・
エレクトゥス、ホモ・サピエンスと変異しているのはなぜか?
進化のスピードが早すぎるのだ。
エジプトハゲワシやガラパゴス・キツツキ、北米ラッコや
チンパンジーは石などの道具を使うが、それが進化に繋がった
形跡はない。道具使用のフィードバックによって知能が発達
したのだろうか? わからない事だらけだ。ともあれ人間の
大脳新皮質は過去50万年の間に急激に進化した。
ミトコンドリアDNAの解析によって、現生人類は今から
約10万年前、東アフリカの草原の2000人ほどの集団
を共通の先祖にして全世界に広がったものだと判明した。
生物学的変化ではなく、文化的大変革が起こるのは4万年前
の事だ。芸術・宗教・呪術・社会体制・道具の技術革新など
が急激に進歩するのである。
さて、創世記本文には「われわれのかたちに、われわれに
かたどって人を造り」とある。素直に読めば、神々が神々
の姿形そっくりに人間をつくったという事になる。神々も
細胞にミトコンドリアを持ち、猿の姿形ではないようだ。
一部の現代人は、姿形を似せて生物を生み出す概念と技術
を知っている。クローンだ。
創世記はシュメール起源のバビロニア生まれだ。その時代
にクローン技術があったのだろうか? 古代エジプトの
パピルスやアッカド神話に、それを示す概念と技術が描写
されていなければ、大麻の吸い過ぎで片付くのだけれど・・
紀元前2700年頃の古代エジプト医師団の記録がパピルス
に残されている。そこには麻酔薬と48の臨床例と投薬の経過、
数例の手術が記載されている。中にはカビの生えたパンに含ま
れる抗生物質で傷(感染症)を治したとある。現代医学に匹敵する
古代エジプトは知れば知るほど驚かされる。
ウィーン美術史美術館エジプト室「ホンス・メスのパピルス」
には、卵細胞のような丸い形の左右に女神が立ち、何かの液体
を注入している様子が描かれている。2つに分裂した卵らしき
図の中には、染色体に結合する紡錘糸(微小管)らしきものが
描かれている。古代エジプト人がクローンの知識を有していた
らしいという見方がある。パピルスは死者の書の一部と思われ
る。ホンス・メス=コンス・メス=コンス神の息子orコンス神
が生んだ者を意味する。
女神が注入している「何かの液体」とは何か? 古代アッカド
の創世叙事詩「アトラ・ハンス」では、アヌの息子・エンキ神
がテエマを注入してアダパ(最初につくりだした完全なる人間)
をつくりだしたとある。テエマとは「記憶を保存するもの」の
意味だそうだ。エンキは医学と知恵の神で、円筒印章では
二重螺旋の蛇がシンボルである。エジプトのトト神やギリシャ
のヘルメスの象徴も同様の蛇である。
アダムの語源はアダモ(土・粘土)だが、シュメール語の粘土
(ティイト)には「生命をもつもの・卵」の意味がある。
シュメール語で人間は「ル」 アッカド語では「ルル=
混ぜ合わされたもの」さらに聖書では人間を「The Adam」
と定冠詞付きで翻訳している。これは個人ではなく、一定の
種族を定義する属名なのだ。
アヌの異母兄妹の女神・ニンティは、牛人・鳥人・翼を持った
人・両性具有の人・山羊の角と蹄を持った人・生殖器を持た
ない人・排尿出来ない人・妊娠出来ない人などを生み出して
いた。遺伝子実験だろう。ティはあばら骨という意味の
シュメール語で、ニンティは命をつくった肋骨(リブ)の女神
と言われている。聖書のイブはヘブル語で「命をもつもの」
という意味である。
エンキはアダパをつくるべく「粘土を混ぜ合わせよ。そして
形づくれ。若く賢明なアヌンナキ(神々)を与えん」と
ニンティに言った。そしてアヌンナキから血とシル(男性から
のみ=精液)を抜き取り、血から神聖なる物質「テエマ」を
抽出した。テエマとシルは清められた容器の中で混ぜ合わ
された。
これらの作業はビド・シムティ(アッカド語・生命の風=
ナピシトゥ(魂)を吹き込む場所)で行われた。混ぜ合わされた
鋳型は、一定の期間を経てエンキの妻・ニンキの子宮に移植
された。
「新しく生まれ出るものに運命を与えよ。ニンキは新しく
生まれ出るものに神の姿を与える。そして新しく生まれ出る
ものは人間となるのだ」
ニンティは月を数え、10番目の月を待った。月満ちて
ニンティは器具で子宮を開き、胎児を取り出した。ニンティ
は新しく生まれ出たものに歓喜した。ニンキの出産成功を
受けて、14人の誕生の女神たちの子宮にも鋳型が移植され
た。そのうち7人は男子を産み、7人は女子を産んだ。
さて現代のクローン技術は、1975年イギリスで、オタマ
ジャクシの細胞核を用いてカエルの複製に成功した事に始まる。
試験官ベビー第1号は、イギリスの医師パトリック・ステプトゥ
が、12年の失敗の末に成功した「ルイーズ・ブラウン」という
名の女の子である。ブラウン夫人の卵子を栄養液の中に浸し、
精子と混ぜ合わせる。成功の決め手は、混ぜ合わせる際、血液
から取り出した物質(血清)を加える事だった。テエマとは血清
の事だった。